豊島区の司法書士&土地家屋調査士 赤坂卓【あかさかすぐる】の日記

豊島区西池袋で開業している司法書士&土地家屋調査士です。相続・会社設立、不動産登記、新築・増築の登記、CAD図面作成などを得意としております。日々の業務に関する情報や独立した人間のリアルを発信しております。

相続土地国庫帰属制度について

新年、明けましておめでとうございます。

今年も、どうぞよろしくお願いいたします。

 

今回は、相続土地国庫帰属の制度について書きたいと思います。

 

 

相続したは良いが、処分に困る不動産、というものが世の中にはあります。

 

 

子は都市部に暮らしているが、地元の両親に相続が発生し、地方の不動産を相続した場合などが典型として挙げられるのではないでしょうか。

 

 

そのような、処分に困る不動産(“負動産”と呼ばれる事もあります。)は年々増え続け、今やその土地の面積は合計すると九州全土の面積より広いと言われており、社会問題として、メディアに取り上げられたりもしました。

 

 

 

そんな状況を何とかしようという機運が高まり、昨年4月に新しく出来た制度が、「相続土地国庫帰属制度」です。

 

 

 

ざっくり簡潔に申し上げると、相続又は遺贈によって名義取得した不要な土地を国に返却する制度です。

 

 

 

 

 

さて、これだけ聞くと、該当される皆様は、なんと素晴らしい制度ができたのだと思うことでしょう。

 

 

 

私自身、生まれが地方の田舎出身なものですから、田舎の不要になった不動産をどうするか、というのは常々、問題意識を持っていました。制度に対する期待値は非常に高いものがありました。

 

 

 

 

しかし、フタを開けてみると、非常に要件が厳しい事が分かります。

 

 

 

いくつか要件を見てみましょう。

 

 

 

まず、対象となる不動産は「土地」のみであり、かつ取得した原因が「相続又は遺贈(相続人に対する遺贈に限る)」に限られます。

 

 

 

 

以下、法務省のHPを参考に、要件を挙げてみます。

 

【申請ができない土地(申請の段階で直ちに却下となる土地)】

① 建物の存する土地

② 担保権又は使用及び収益を目的とする権利が設定されている土地

③ 通路その他の他人による使用が予定されている土地が含まれる土地

④ 土壌汚染対策法上の特定有害物質により汚染されている土地

⑤ 境界が明らかでない土地その他の所有権の存否、帰属又は範囲について争いがある土地

 

【帰属の承認ができない土地(審査の段階で該当すると判断された場合に不承認となる土地)】

① 崖(勾配が30度以上であり、かつ、高さが5メートル以上のもの)がある土地のうち、その通常の管理に当たり過分の費用又は労力を要するもの

② 土地の通常の管理又は処分を阻害する工作物、車両又は樹木その他の有体物が地上に存する土地

③ 除去しなければ土地の通常の管理又は処分をすることができない有体物が地下に存する土地

④ 隣接する土地の所有者等との争訟によらなければ管理・処分ができない土地

⑤ 通常の管理又は処分をするに当たり過分の費用又は労力を要する以下の土地

 ァ:災害の危険により、土地周辺の人や財産に被害を生じさせるおそれを防止するための措置が必要な土地

 イ:土地に生息する動物により、土地や土地周辺の人、農産物、樹木に被害を生じさせる土地

 ウ:国による整備(造林、間伐、保育)が必要な土地(山林)

 エ:国庫に帰属した後、国が管理に要する費用以外の金銭債務を法令の規定に基づき負担する土地

 オ:国庫に帰属したことに伴い、法令の規定に基づき承認申請者の金銭債務を国が承継する土地

 

 

 

そもそも、売買できる土地や資産として活用できる土地であれば、この制度を使うことはないでしょう。不要であるからこそ、国庫への帰属を考えるのです。

 

そのような土地が上記要件をすべてクリアするのはかなり難しい、というのは想像に難くないでしょう。

 

 

 

加えて、相続土地国庫帰属制度には「負担金」というものがあります。

 

 

 

国へ返還する際に、支払うお金です。

 

 

これは、最低20万円とされていますが、一定の要件に該当する土地は面積に応じて加算される仕組みです。しかし、そもそも国庫帰属を考えるような土地は基本的に左記のいずれか要件に該当し、面積に応じて加算されるケースが多いと考えられます。

 

 

結果、面積が大きい土地だと場合によっては数百万単位で負担金を求められる事も十分考えられます。

 

 

 

 

 

さて、では相続土地国庫帰属は使えない制度なのかと言えば、そうではなく、使いどころを見極めて使っていく必要がある、という事です。

 

 

例えば、建物がなく面積の小さい土地であれば、要件面さえクリアすれば、負担金も少なくて済みます。また、処分の際に規制の多い農地についても使える事もポイントかと思います。

 

 

使う局面が限られているのは間違いないですが、あくまで、以前より「選択肢が増えた」と考えるべき制度である、と言えるでしょう。