豊島区の司法書士&土地家屋調査士 赤坂卓【あかさかすぐる】の日記

豊島区西池袋で開業している司法書士&土地家屋調査士です。相続・会社設立、不動産登記、新築・増築の登記、CAD図面作成などを得意としております。日々の業務に関する情報や独立した人間のリアルを発信しております。

1人会社の社長が死亡するとどうなるか

司法書士土地家屋調査士の赤坂卓です。

 

 

平成18年に会社法が施行され、最低資本金制度が撤廃され、取締役1人の会社も認められるようになりました。起業のハードルが下がった事もあり、1人で会社を設立される方も増えました。

 

 

そんな中、日本はいま超高齢化社会の真っ只中にあります。

会社経営される身近な親族が亡くなり、相続が発生する事もあるでしょう。

 

 

今回は、タイトル通り、1人で経営されている社長(以下、「1人役員」と言います。)が死亡した場合、どのような法律関係になるか、考えてみたいと思います。

 

 

 

 

まず、役員が誰もいなくなるのだから、会社は解散するのではないか?との疑問が生じます。

 

 

 

ところで、会社法には会社の形態として大きく2つの形態があります。

1つが「株式会社」、もう1つが「持分会社」というものです。

 

 

役員の欠如が会社の解散自由に該当するか否かは会社の形態によって異なります。

 

 

株式会社であれば1人役員が死亡しても解散自由には該当しません(会社法471条)。

反対に、持分会社ですと解散自由に該当します(会社法607条・641条)。

 

 

 

理由としては、株式会社は「所有と経営の分離」と言い、所有=株主、経営=役員(取締役等)と役割が二分されており、役員が死亡しても、会社のオーナーである株主が存在する限り、会社自体は株主の為に存続し得るからです。株主総会を開催し、新しく役員を選任する事が可能です。

 

 

 

この点、持分会社ですと、株式会社のように所有と経営の分離は図られておらず、新しい役員を加入させるには原則として現役員の同意が必要となるので、役員が欠けると会社の解散自由に該当します。

 

 

 

 

さて、実際の中小企業などでは、株式会社において1人役員が株主も兼ねている、という場合が往々にしてあります。

 

 

1人役員 兼 1人株主というケースです。

以下、この点について考えてみましょう。

 

 

この場合に、株式会社の役員(取締役)が死亡すると、以下の2つは相続の対象になるのでしょうか?

 

 

①取締役たる地位

②会社の株式

 

 

 

まず①については、相続の対象とはなりません。

 

先代が死亡し、息子が二代目社長に就任する、というのはよく聞く話かも知れません。が、それは相続によって二代目に就任している訳ではなく、別途手続きを踏んで選任しています。

 

 

相続の対象とならないのは、会社と役員(取締役)の関係は委任関係にあるとされ、死亡により委任関係が当然に終了すると考えられるからです。(会社法330条、民法653条)また、取締役の地位は一身専属権だから相続の対象にはならない、とも説明できるでしょう(民法896条但書)。

 

 

 

 

次に②の株式ですが、こちらは財産権ですので相続の対象となります。

 

よって、相続人が複数いるのであれば別途、遺産分割協議等により、株式を取得する相続人を決定する必要があります。以降、株主権は株式を取得した相続人が行使します。

 

 

 

 

上記の通り、1人役員 兼 1人株主が死亡すると、株式は相続されるものの、役員(取締役)の地位は相続されない為、役員がいない状態が生じます。株主総会を開いて、新たに取締役を選任する必要があります。

 

※ 本来、株主総会の招集は取締役が行う為、取締役が不在であれば、開催ができないとも考えられますが、株主全員の同意があれば招集手続が不要となる為、開催は可能です。(会社法298条・300条)

 

 

 

 

株主総会を開き、新しく役員(取締役等)を選任すれば、引き続き、会社としての活動を再開できます。

 

※ なお、登記手続の技術的な話になりますが、上記の役員選任の際の株主総会議事録には、出席した役員全員の個人実印+印鑑証明書が必要になるので注意が必要です。前任の代表者が権限を持って株主総会に出席するという事態が想定できないからです。(商業登記規則61条6項)

 

 

 

 

 

さて、いかがだったでしょうか。

 

平成18年に会社法が施行されて以降、15年以上が経過し、1人で会社経営されている方も、ずいぶん増えました。

 

そんな方々に少しでも参考な記事となれば幸いです。