法律に関する実務を行っていると、法律が改正される度に、新しい知識に対応しなくてはなりません。
商法や会社法などは大きな法律にもかかわらず例年のように改正される為、知識のブラッシュアップは必須かと思われます。
ここ最近では、民法に関する改正が相次いでいます。平成29年の財産法改正に始まり、相続法の分野に関する改正もありました。
さて、今回は、免責的債務引受に関してですが、こちらも改正がなされており、特に金融機関の登記実務を日々行う司法書士としては注意が必要な改正です。
まずは改正された債務引受に関する条文ですが以下のようにあります。
(なお、併存的債務引受については今回は割愛します。)
(免責的債務引受の要件及び効果)
第472条 免責的債務引受の引受人は債務者が債権者に対して負担する債務と同一の内容の債務を負担し、債務者は自己の債務を免れる。
2 免責的債務引受は、債権者と引受人となる者との契約によってすることができる。この場合において、免責的債務引受は、債権者が債務者に対してその契約をした旨を通知した時に、その効力を生ずる。
3 免責的債務引受は、債務者と引受人となる者が契約をし、債権者が引受人となる者に対して承諾をすることによってもすることができる
なお、債権者、債務者、(債務の引受人)の3人で3面契約として契約するのであれば何の問題もありません。原則として契約と同時に効力が発生します。当事者の皆が契約の内容を了知しているからです。
ポイントとなるのは上の条文の民法472条第2項にあたる部分です。
民法472条2項は以下のような規定になっています。
→「免責的債務引受は、債権者と引受人となる者との契約によってすることができる。この場合において、免責的債務引受は、債権者が債務者に対してその契約をした旨を通知した時に、その効力を生ずる。」
実は、従来の判例では、債権者・引受人の2面契約の場合でも、債務者の意思に反しない限り、その同意がなくても契約が成立すると解されていました。
しかし、改正後の条文を見ると分かりますが、2面契約を行うだけではその効力は未だ発生せず、債権者が債務者に対してその契約をした旨を「通知した時」に、その効力を生じる、と変更されました。
免責的債務引受に関する債務者の変更登記などは、司法書士であれば実務の中で頻繁に出会う類型の登記かもしれません。
つまり、これまでは例えば金融機関(債権者)と引受人の2面契約でした契約に基づいて登記していたものが、今回の改正で、2面契約のみでは未だ効力発生していない状態であり、その時点では登記はできず、金融機関(債権者)から債務者に対して免責的債務引受契約をした旨を「通知した時」まで、確認する必要がある、という規定になりました。
当然、その内容は登記原因証明情報に記載する必要があるでしょう。
さて、いかだったでしょうか。
改正される法律のすべて追う事は不可能ですが、日々の実務に関係するところは知識を補充しアンテナを張っておきたいものです。