こんにちは。
今回は、相続人の中に相続放棄をした者がある場合について考えてみたいと思います。
令和6年4月1日から相続登記が義務化されることも相まって、世間一般で相続への関心は高まっている事と思います。
相続手続をする場合、相続人が2人以上であるならば、遺産分割協議をして、誰が・何を・どのように、相続するのかを決めることが一般的かと思います。
さて、その遺産分割協議ですが、基本的に相続人の「全員」で行う必要があります。
相続人の一部で協議しても、また仮に一部の相続人の相続分がいかに多くても、全員で行わないと遺産分割協議としては効力を生じ得ません。
それでは、相続人の中に相続放棄をしている者がいた場合はどうなるのでしょうか。
相続放棄をすると「初めから相続人ではなかった」ものとみなされます。
すなわち、初めから相続人ではないので、遺産分割協議に参加する必要はありませんし、参加することもできません。
相続放棄をした者を除いた他の相続人のみで遺産分割協議をするしかありません。
当然、出来上がった遺産分割協議書は、戸籍から判明した相続人全員の押印が揃っていない形となります。
そうすると、実際に相続手続きをする際に困った事態が生じます。
例えば、不動産登記であれば法務局、相続税申告であれば税務署、預貯金解約等であれば金融機関と手続を行いますが、基本的に被相続人との関係を証明する戸籍と遺産分割協議書を提出しますので、外部からは、戸籍から読み取れる相続人の全員で遺産分割協議書を行っていない、と判断されます。
さて、ここからが本題なのですが、その相続放棄の申述受理証明書は、どうやって手に入れるのでしょうか。
原則は、本人が取得すべきものです。
本人が、自ら取得してくれる場合はそれで良いでしょう。
しかし、相続放棄をしているくらいなので、必ずしも取得に協力してもらえるとは限りません。
場合によっては関わりたくない、連絡が取れない、どこにいるか分からない、などといったケースも考えられるでしょう。
そういった場合、証明書の取得ができないのか、というと、そんな事はありません。
根拠条文としては、以下の条文が該当すると思われます。
家事事件手続法(記録の閲覧等)
第四十七条 当事者又は利害関係を疎明した第三者は、家庭裁判所の許可を得て、裁判所書記官に対し、家事審判事件の記録の閲覧若しくは謄写、その正本、謄本若しくは抄本の交付又は家事審判事件に関する事項の証明書の交付(第二百八十九条第六項において「記録の閲覧等」という。)を請求することができる。
厳密には、まず家庭裁判所に相続放棄がされた事件の事件番号等の照会を行い事件番号等を特定した上で、申述受理証明書の交付を請求する、という2段階の手続を要します。このあたりは家庭裁判所の存する地域によって多少の運用差があるかも知れません。
得られた相続放棄申述受理証明書と遺産分割協議書をセットにする事で、相続手続が瑕疵なく進められます。