豊島区の司法書士&土地家屋調査士 赤坂卓【あかさかすぐる】の日記

豊島区西池袋で開業している司法書士&土地家屋調査士です。相続・会社設立、不動産登記、新築・増築の登記、CAD図面作成などを得意としております。日々の業務に関する情報や独立した人間のリアルを発信しております。

行政書士試験に合格しました

こんにちは。

司法書士土地家屋調査士の赤坂卓です。

 

昨年11月に行われた行政書士試験を受験しておりましたが、無事、合格しておりました。

 

これまでの資格試験は全て予備校を利用しましたが、今回は独学で挑みました。

 

もともと、司法書士業務・土地家屋調査士業務は不動産が絡む為、行政の規制法が関係する事があり(特に農地等)、行政書士資格で何か出来る事があるのではないかと思い、受験しました。

 

今のところ登録の予定は未定ですが、ある程度の事業の見通しが立った段階で、登録を検討したいと思います。

 

今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。

 

相続人の中に相続放棄をした者がある場合

こんにちは。

司法書士土地家屋調査士の赤坂卓です。

 

今回は、相続人の中に相続放棄をした者がある場合について考えてみたいと思います。

 

 

令和6年4月1日から相続登記が義務化されることも相まって、世間一般で相続への関心は高まっている事と思います。

 

 

相続手続をする場合、相続人が2人以上であるならば、遺産分割協議をして、誰が・何を・どのように、相続するのかを決めることが一般的かと思います。

 
 
さて、その遺産分割協議ですが、基本的に相続人の「全員」で行う必要があります。
相続人の一部で協議しても、また仮に一部の相続人の相続分がいかに多くても、全員で行わないと遺産分割協議としては効力を生じ得ません。
 
 
それでは、相続人の中に相続放棄をしている者がいた場合はどうなるのでしょうか。
 
 
相続放棄をすると「初めから相続人ではなかった」ものとみなされます。
すなわち、初めから相続人ではないので、遺産分割協議に参加する必要はありませんし、参加することもできません。
 
 
相続放棄をした者を除いた他の相続人のみで遺産分割協議をするしかありません。
 
 
当然、出来上がった遺産分割協議書は、戸籍から判明した相続人全員の押印が揃っていない形となります。
 
 
そうすると、実際に相続手続きをする際に困った事態が生じます。
 
 
例えば、不動産登記であれば法務局、相続税申告であれば税務署、預貯金解約等であれば金融機関と手続を行いますが、基本的に被相続人との関係を証明する戸籍と遺産分割協議書を提出しますので、外部からは、戸籍から読み取れる相続人の全員で遺産分割協議書を行っていない、と判断されます。
 
 
そこで、遺産分割協議に参加していない相続放棄をした者が、相続放棄をした事を証する書類、具体的には家庭裁判所への相続放棄申述受理証明書等の提出が必要となります。
 
 
 
さて、ここからが本題なのですが、その相続放棄の申述受理証明書は、どうやって手に入れるのでしょうか。
 
 
 
原則は、本人が取得すべきものです。
本人が、自ら取得してくれる場合はそれで良いでしょう。
 
 
しかし、相続放棄をしているくらいなので、必ずしも取得に協力してもらえるとは限りません。
 
 
場合によっては関わりたくない、連絡が取れない、どこにいるか分からない、などといったケースも考えられるでしょう。
 
 
そういった場合、証明書の取得ができないのか、というと、そんな事はありません。
 
 
「利害関係人からの請求」という形で、家庭裁判所相続放棄の受理証明書の発行を請求することが可能です。他の相続人はこの場合の「利害関係人」に該当するとされています。
 
根拠条文としては、以下の条文が該当すると思われます。
 
家事事件手続法(記録の閲覧等)
第四十七条 当事者又は利害関係を疎明した第三者は、家庭裁判所の許可を得て、裁判所書記官に対し、家事審判事件の記録の閲覧若しくは謄写、その正本、謄本若しくは抄本の交付又は家事審判事件に関する事項の証明書の交付(第二百八十九条第六項において「記録の閲覧等」という。)を請求することができる。
 
 
厳密には、まず家庭裁判所相続放棄がされた事件の事件番号等の照会を行い事件番号等を特定した上で、申述受理証明書の交付を請求する、という2段階の手続を要します。このあたりは家庭裁判所の存する地域によって多少の運用差があるかも知れません。
 
 
得られた相続放棄申述受理証明書と遺産分割協議書をセットにする事で、相続手続が瑕疵なく進められます。
 
 

相続土地国庫帰属制度について

新年、明けましておめでとうございます。

今年も、どうぞよろしくお願いいたします。

 

今回は、相続土地国庫帰属の制度について書きたいと思います。

 

 

相続したは良いが、処分に困る不動産、というものが世の中にはあります。

 

 

子は都市部に暮らしているが、地元の両親に相続が発生し、地方の不動産を相続した場合などが典型として挙げられるのではないでしょうか。

 

 

そのような、処分に困る不動産(“負動産”と呼ばれる事もあります。)は年々増え続け、今やその土地の面積は合計すると九州全土の面積より広いと言われており、社会問題として、メディアに取り上げられたりもしました。

 

 

 

そんな状況を何とかしようという機運が高まり、昨年4月に新しく出来た制度が、「相続土地国庫帰属制度」です。

 

 

 

ざっくり簡潔に申し上げると、相続又は遺贈によって名義取得した不要な土地を国に返却する制度です。

 

 

 

 

 

さて、これだけ聞くと、該当される皆様は、なんと素晴らしい制度ができたのだと思うことでしょう。

 

 

 

私自身、生まれが地方の田舎出身なものですから、田舎の不要になった不動産をどうするか、というのは常々、問題意識を持っていました。制度に対する期待値は非常に高いものがありました。

 

 

 

 

しかし、フタを開けてみると、非常に要件が厳しい事が分かります。

 

 

 

いくつか要件を見てみましょう。

 

 

 

まず、対象となる不動産は「土地」のみであり、かつ取得した原因が「相続又は遺贈(相続人に対する遺贈に限る)」に限られます。

 

 

 

 

以下、法務省のHPを参考に、要件を挙げてみます。

 

【申請ができない土地(申請の段階で直ちに却下となる土地)】

① 建物の存する土地

② 担保権又は使用及び収益を目的とする権利が設定されている土地

③ 通路その他の他人による使用が予定されている土地が含まれる土地

④ 土壌汚染対策法上の特定有害物質により汚染されている土地

⑤ 境界が明らかでない土地その他の所有権の存否、帰属又は範囲について争いがある土地

 

【帰属の承認ができない土地(審査の段階で該当すると判断された場合に不承認となる土地)】

① 崖(勾配が30度以上であり、かつ、高さが5メートル以上のもの)がある土地のうち、その通常の管理に当たり過分の費用又は労力を要するもの

② 土地の通常の管理又は処分を阻害する工作物、車両又は樹木その他の有体物が地上に存する土地

③ 除去しなければ土地の通常の管理又は処分をすることができない有体物が地下に存する土地

④ 隣接する土地の所有者等との争訟によらなければ管理・処分ができない土地

⑤ 通常の管理又は処分をするに当たり過分の費用又は労力を要する以下の土地

 ァ:災害の危険により、土地周辺の人や財産に被害を生じさせるおそれを防止するための措置が必要な土地

 イ:土地に生息する動物により、土地や土地周辺の人、農産物、樹木に被害を生じさせる土地

 ウ:国による整備(造林、間伐、保育)が必要な土地(山林)

 エ:国庫に帰属した後、国が管理に要する費用以外の金銭債務を法令の規定に基づき負担する土地

 オ:国庫に帰属したことに伴い、法令の規定に基づき承認申請者の金銭債務を国が承継する土地

 

 

 

そもそも、売買できる土地や資産として活用できる土地であれば、この制度を使うことはないでしょう。不要であるからこそ、国庫への帰属を考えるのです。

 

そのような土地が上記要件をすべてクリアするのはかなり難しい、というのは想像に難くないでしょう。

 

 

 

加えて、相続土地国庫帰属制度には「負担金」というものがあります。

 

 

 

国へ返還する際に、支払うお金です。

 

 

これは、最低20万円とされていますが、一定の要件に該当する土地は面積に応じて加算される仕組みです。しかし、そもそも国庫帰属を考えるような土地は基本的に左記のいずれか要件に該当し、面積に応じて加算されるケースが多いと考えられます。

 

 

結果、面積が大きい土地だと場合によっては数百万単位で負担金を求められる事も十分考えられます。

 

 

 

 

 

さて、では相続土地国庫帰属は使えない制度なのかと言えば、そうではなく、使いどころを見極めて使っていく必要がある、という事です。

 

 

例えば、建物がなく面積の小さい土地であれば、要件面さえクリアすれば、負担金も少なくて済みます。また、処分の際に規制の多い農地についても使える事もポイントかと思います。

 

 

使う局面が限られているのは間違いないですが、あくまで、以前より「選択肢が増えた」と考えるべき制度である、と言えるでしょう。

 

 

免責的債務引受について

司法書士土地家屋調査士の赤坂卓です。

 

 

法律に関する実務を行っていると、法律が改正される度に、新しい知識に対応しなくてはなりません。

 

商法や会社法などは大きな法律にもかかわらず例年のように改正される為、知識のブラッシュアップは必須かと思われます。

 

ここ最近では、民法に関する改正が相次いでいます。平成29年の財産法改正に始まり、相続法の分野に関する改正もありました。

 

 

 

さて、今回は、免責的債務引受に関してですが、こちらも改正がなされており、特に金融機関の登記実務を日々行う司法書士としては注意が必要な改正です。

 

 

 

 

 

 

まずは改正された債務引受に関する条文ですが以下のようにあります。

(なお、併存的債務引受については今回は割愛します。)

 

 

(免責的債務引受の要件及び効果)
第472条 免責的債務引受の引受人は債務者が債権者に対して負担する債務と同一の内容の債務を負担し、債務者は自己の債務を免れる。
 免責的債務引受は、債権者と引受人となる者との契約によってすることができる。この場合において、免責的債務引受は、債権者が債務者に対してその契約をした旨を通知した時に、その効力を生ずる。
 免責的債務引受は、債務者と引受人となる者が契約をし、債権者が引受人となる者に対して承諾をすることによってもすることができる
 
 
 
これまでの改正前の民法では債務引受に関する具体的な規定がなく、その解釈が判例や学説に委ねられていました。しかし、今回の改正によって要件効果等々、条文で明確になりました。
 
 
なお、債権者、債務者、(債務の引受人)の3人で3面契約として契約するのであれば何の問題もありません。原則として契約と同時に効力が発生します。当事者の皆が契約の内容を了知しているからです。
 
 
 
ポイントとなるのは上の条文の民法472条第2項にあたる部分です。
 
 
 
民法472条2項は以下のような規定になっています。
 →「免責的債務引受は、債権者と引受人となる者との契約によってすることができる。この場合において、免責的債務引受は、債権者が債務者に対してその契約をした旨を通知した時に、その効力を生ずる。」
 
 
 
実は、従来の判例では、債権者・引受人の2面契約の場合でも、債務者の意思に反しない限り、その同意がなくても契約が成立すると解されていました。
 
 
 
 
しかし、改正後の条文を見ると分かりますが、2面契約を行うだけではその効力は未だ発生せず、債権者が債務者に対してその契約をした旨を「通知した時」に、その効力を生じる、と変更されました。
 
 
 
免責的債務引受に関する債務者の変更登記などは、司法書士であれば実務の中で頻繁に出会う類型の登記かもしれません。
 
 
つまり、これまでは例えば金融機関(債権者)と引受人の2面契約でした契約に基づいて登記していたものが、今回の改正で、2面契約のみでは未だ効力発生していない状態であり、その時点では登記はできず、金融機関(債権者)から債務者に対して免責的債務引受契約をした旨を「通知した時」まで、確認する必要がある、という規定になりました。
 
 
 
当然、その内容は登記原因証明情報に記載する必要があるでしょう。
 
 
 
 
 
さて、いかだったでしょうか。
 
改正される法律のすべて追う事は不可能ですが、日々の実務に関係するところは知識を補充しアンテナを張っておきたいものです。

1人会社の社長が死亡するとどうなるか

司法書士土地家屋調査士の赤坂卓です。

 

 

平成18年に会社法が施行され、最低資本金制度が撤廃され、取締役1人の会社も認められるようになりました。起業のハードルが下がった事もあり、1人で会社を設立される方も増えました。

 

 

そんな中、日本はいま超高齢化社会の真っ只中にあります。

会社経営される身近な親族が亡くなり、相続が発生する事もあるでしょう。

 

 

今回は、タイトル通り、1人で経営されている社長(以下、「1人役員」と言います。)が死亡した場合、どのような法律関係になるか、考えてみたいと思います。

 

 

 

 

まず、役員が誰もいなくなるのだから、会社は解散するのではないか?との疑問が生じます。

 

 

 

ところで、会社法には会社の形態として大きく2つの形態があります。

1つが「株式会社」、もう1つが「持分会社」というものです。

 

 

役員の欠如が会社の解散自由に該当するか否かは会社の形態によって異なります。

 

 

株式会社であれば1人役員が死亡しても解散自由には該当しません(会社法471条)。

反対に、持分会社ですと解散自由に該当します(会社法607条・641条)。

 

 

 

理由としては、株式会社は「所有と経営の分離」と言い、所有=株主、経営=役員(取締役等)と役割が二分されており、役員が死亡しても、会社のオーナーである株主が存在する限り、会社自体は株主の為に存続し得るからです。株主総会を開催し、新しく役員を選任する事が可能です。

 

 

 

この点、持分会社ですと、株式会社のように所有と経営の分離は図られておらず、新しい役員を加入させるには原則として現役員の同意が必要となるので、役員が欠けると会社の解散自由に該当します。

 

 

 

 

さて、実際の中小企業などでは、株式会社において1人役員が株主も兼ねている、という場合が往々にしてあります。

 

 

1人役員 兼 1人株主というケースです。

以下、この点について考えてみましょう。

 

 

この場合に、株式会社の役員(取締役)が死亡すると、以下の2つは相続の対象になるのでしょうか?

 

 

①取締役たる地位

②会社の株式

 

 

 

まず①については、相続の対象とはなりません。

 

先代が死亡し、息子が二代目社長に就任する、というのはよく聞く話かも知れません。が、それは相続によって二代目に就任している訳ではなく、別途手続きを踏んで選任しています。

 

 

相続の対象とならないのは、会社と役員(取締役)の関係は委任関係にあるとされ、死亡により委任関係が当然に終了すると考えられるからです。(会社法330条、民法653条)また、取締役の地位は一身専属権だから相続の対象にはならない、とも説明できるでしょう(民法896条但書)。

 

 

 

 

次に②の株式ですが、こちらは財産権ですので相続の対象となります。

 

よって、相続人が複数いるのであれば別途、遺産分割協議等により、株式を取得する相続人を決定する必要があります。以降、株主権は株式を取得した相続人が行使します。

 

 

 

 

上記の通り、1人役員 兼 1人株主が死亡すると、株式は相続されるものの、役員(取締役)の地位は相続されない為、役員がいない状態が生じます。株主総会を開いて、新たに取締役を選任する必要があります。

 

※ 本来、株主総会の招集は取締役が行う為、取締役が不在であれば、開催ができないとも考えられますが、株主全員の同意があれば招集手続が不要となる為、開催は可能です。(会社法298条・300条)

 

 

 

 

株主総会を開き、新しく役員(取締役等)を選任すれば、引き続き、会社としての活動を再開できます。

 

※ なお、登記手続の技術的な話になりますが、上記の役員選任の際の株主総会議事録には、出席した役員全員の個人実印+印鑑証明書が必要になるので注意が必要です。前任の代表者が権限を持って株主総会に出席するという事態が想定できないからです。(商業登記規則61条6項)

 

 

 

 

 

さて、いかがだったでしょうか。

 

平成18年に会社法が施行されて以降、15年以上が経過し、1人で会社経営されている方も、ずいぶん増えました。

 

そんな方々に少しでも参考な記事となれば幸いです。

 

相続放棄者による相続財産の管理義務

司法書士土地家屋調査士の赤坂卓です。

 

今日は、相続放棄者による相続財産の管理義務について書きたいと思います。

 

 

 

本題に入る前に、「相続放棄」について簡単に触れておきます。

 

 

今回の記事で出てくる「相続放棄」という言葉は、家庭裁判所に申述してする相続放棄を指します。ですので、相続人の間で遺産分割協議などを行い、相続財産を取得しない旨の意思表示をする場合とは事例が全く異なります。

 

 

 

 

民法に以下の規定があります。

 

(相続の放棄の方式)
第938条 相続の放棄をしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。
(相続の放棄の効力)
第939条 相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす
 
 
 
 
 
相続放棄というと、被相続人が借金などの負債を抱えており、それらを相続したくない場合に利用する、というのが一般的に知られている利用法ではないでしょうか。
 
 
 
 
最近では、利用価値のない不動産、例えば田舎の山林や使用しない空き家など(“負”動産などと呼ばれたりもします)を相続したくない場合に、相続放棄をする方も増えています。
 
 
 
 
相続放棄をすると「初めから相続人とならなかったものとみなされる」為、被相続人が有していた相続財産を取得する事はありません。プラスの財産であろうとマイナスの財産であろうと「初めから相続人ではない」ので、相続財産を相続することはない、という扱いなのですね。
 
 
 
 
 
 
 
 
さて、ここから本題に戻ります。
 
 
 
 
 
それでは、相続放棄をした者は、一切の権利義務から解放されるのでしょうか。
 
 
実は、民法に以下のような条文が存在します。
 
 
 
 
(相続の放棄をした者による管理)
第940条 相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない。
 
 
 
 
 
相続放棄をしても、管理する財産がある場合、他の相続人(または次の順位の相続人)が管理を始めることができるまで、管理する義務があるというのです。
 
 
 
 
 
 
 
例えば、誰も管理していない空き家などをイメージすると分かり易いかも知れません。
 
 
 
 
被相続人が死亡し、相続人が相続放棄し、空き家がそのまま放置されると、隣地や周辺住民の方々は困るのではないでしょうか。
 
 
 
 
そのような場合に、民法940条を根拠に相続放棄をした者に、何らかの義務履行ないし責任を問えるのか、という問題があるのです。
 
 
 
 
 
 
実は、この点につき、解釈や見解が分かれており、現時点での定説はないようです。
 
 
 
 
そんな中、国土交通省及び総務省が平成27年に行った「空家等対策の推進に関する特別措置法」に関する質問への回答の中で、民法第940条義務はあくまで「相続人間のものであり、第三者一般(例えば地域住民等)に対する義務ではない」との見解を示しています。
 
 
 
 
 
もちろん、この見解が絶対のものではありませんが、上記の見解によると、相続放棄をした者に対して、相続人ではない第三者らが何らかの義務履行ないし責任等を問う事は難しいと考えられるでしょう。
 
 
 
 
 
実際問題として、昨今、社会問題ともなっている空き家問題の現場では、かねてより民法940条を根拠に、相続放棄者に、空き家の管理義務を、第三者(例えば市町村等)との関係でも負わせる事ができるのかが問題となっていたようです。
 
 
 
 
 
以上のように、相続放棄者の相続財産の管理義務については、発生要件や義務の内容等が不明確であったことから、本記事を書いている時点で、改正民法が成立しており、条文の文言が以下のように改められています。(施行予定日は令和5年4月1日)
 
 
 
 
(相続の放棄をした者による管理)
改正民法第940条 相続の放棄をした者は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人又は第九百五十二条第一項の相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない。
 
 
 
義務の発生要件や内容、終期等、現行民法より文言が詳細になったのがお分かりでしょうか。
 
 
 
 
 
 
 
 
さて、いかがだったでしょうか。
 
 
 
私も、日々業務を行う中で、相続人が相続放棄をしている場面に出くわす事があります。他に権利義務を承継した相続人がいるのであれば良いですが、そうでない事もあります。
 
 
そのような場合に、上に述べたような知識見解が、一つの指針となり得ると考えております。
 

破産管財人による任意売却

司法書士土地家屋調査士 の 赤坂卓 です。

 

今日は、破産管財人の任意売却に関する登記について書きたいと思います。

 

 

 

破産管財人の任意売却の登記は、司法書士であれば、一度は体験したことがある、という人も多いのではないでしょうか。

 

 

破産管財人の任意売却において、不動産の所有権移転登記をする際、通常の手続とは異なる点がいくつかあります。

 

 

 

以下、登記の視点からポイントとなると思う点を箇条書きにまとめてみます。

 

①裁判所の許可証 が必要

②所有権の登記識別情報、登記済権利証 が不要

破産管財人の選任を証する書類(3ヵ月以内) が必要

破産管財人の届出印の印鑑証明書 が必要

破産管財人が任意売却した不動産の所有権移転登記の申請は、当該不動産について破産の登記がされていない場合であっても、受理される。

 

 

 

さて、かくいう私も以前に経験したことがあるので、添付する書類などは知っておりましたが、これらの「根拠」となると、実は複数の法律の規定や先例通達が絡み合っています。

 

 

 

以下、忘備録も兼ねて、根拠となる条文等を提示します。

 

 

① 裁判所の許可証 が必要

 

 (破産管財人の権限)

 破産法第78条 破産手続開始の決定があった場合には、破産財団に属する財産の管理及び処分をする権利は、裁判所が選任した破産管財人に専属する。

 2 破産管財人が次に掲げる行為をするには、 裁判所の許可 を得なければならない。

 一 不動産に関する物権、登記すべき日本船舶又は外国船舶の任意売却

 

 (添付情報)

 不動産登記令第7条 登記の申請をする場合には、次に掲げる情報をその申請情報と併せて登記所に提供しなければならない。

 ハ 登記原因について三者の許可、同意又は承諾を要するときは、当該第三者が許可し、同意し、又は承諾したことを証する情報

 

   ※ 登記原因証明情報に、裁判所の許可を得た事実の記載が必要です。

    ∵「登記原因」とは「登記の原因となる事実又は法律行為をいう。」と定義される。(不動産登記法第5条2項)

 

② 所有権の登記識別情報、登記済権利証 が不要

(昭和34年5月12日 民事甲第929号)

 

破産管財人の選任を証する書類(3ヵ月以内)が必要

破産管財人の届出印の印鑑証明書 が必要

(平成16年12月16日 法務省民二第3554号)

 ※ 破産管財人の個人の実印+印鑑証明書(3ヵ月以内)でも可

  (昭和34年4月30日 民事甲第859号)

 

 (破産管財人の選任等・法第74条)

 破産規則 第23条 裁判所は、破産管財人を選任するに当たっては、その職務を行うに適した者を選 任するものとする。

  3 裁判所書記官は、破産管財人に対し、その選任を証する書面を交付しなければならない。

 4 裁判所書記官は、破産管財人があらかじめその職務のために使用する印鑑を裁判所に提出 した場合において、当該破産管財人が破産財団に属する不動産についての権利に関する登記を 申請するために登記所に提出する印鑑の証明を請求したときは、当該破産管財人に係る前項に 規定する書面に、当該請求に係る印鑑が裁判所に提出された印鑑と相違ないことを証明する旨 をも記載して、これを交付するものとする。

 

  ※ 破産規則第23条4項に該当する場合は、選任証明書と届出印に関する印鑑証明書が1枚の書類にセットになって発行されます。

 

 (添付情報)

 不動産登記令第7条 登記の申請をする場合には、次に掲げる情報をその申請情報と併 せて登記所に提供しなければならない。

 二 代理人によって登記を申請するとき(法務省令で定める場合を除く。)は、当該代理人の権限を証する情報

 (代表者の資格を証する情報を記載した書面の期間制限等)

 不動産登記令第17条 第七条第一項第一号ロ又は第二号に掲げる情報を記載した書面であって、市町村長、登記官その他の公務員が職務上作成したものは、作成後三月以内のものでなければならない。

 

 (代理人の権限を証する情報を記載した書面への記名押印等)

 不動産登記令第18条 委任による代理人によって登記を申請する場合には、申請人又はその代表者は、法務省令で定める場合を除き、当該代理人の権限を証する情報を記載した書面に記名押印しなければならない。復代理人によって申請する場合における代理人についても、同様とする。

 2 前項の場合において、代理人(復代理人を含む。)の権限を証する情報を記載した書面には、法務省令で定める場合を除き、同項の規定により記名押印した者(委任による代理人を除く。)の印鑑に関する証明書を添付しなければならない。

 3 前項の印鑑に関する証明書は、作成後三月以内のものでなければならない。

 

 (委任状への記名押印等の特例)

 不動産登記規則第49条

 2 令第十八条第二項の法務省令で定める場合は、次に掲げる場合とする。

 三 裁判所によって選任された者がその職務上行う申請の委任状に押印した印鑑に関する証明書であって、裁判所書記官最高裁判所規則で定めるところにより作成したものが添付されている場合

 

破産管財人が任意売却した不動産の所有権移転登記の申請は、当該不動産について破産の登記がされていない場合であっても、受理される。

(登記研究545号)

 

【参考】

(個人の破産手続に関する登記の嘱託等)

破産法第258条 個人である債務者について破産手続開始の決定があった 場合において、次に掲げるときは、裁判所書記官は、職権で、遅滞なく、破産手続開始の登記を登記所に嘱託しなければならない。

一 当該破産者に関する登記があることを知ったとき。

二 破産財団に属する権利で登記がされたものがあることを知ったとき。

 

   ※破産の登記がされている場合、破産管財人の任意売却によって、その不動産は破産財団に属しないことになるので、裁判所書記官の嘱託によって破産の登記が抹消されます。(昭和32年3月20日 民事甲第542号)