豊島区の司法書士&土地家屋調査士 赤坂卓【あかさかすぐる】の日記

豊島区西池袋で開業している司法書士&土地家屋調査士です。相続・会社設立、不動産登記、新築・増築の登記、CAD図面作成などを得意としております。日々の業務に関する情報や独立した人間のリアルを発信しております。

根抵当権の債務者の会社分割

司法書士&調査士の赤坂卓です。

 

先日、新しく表題登記した物件に、根抵当権の追加設定をしたいという依頼がありました。

 

 

 

普段なら、建物の保存登記と共同根抵当権の追加設定登記の2件の登記を申請すればすむところ、今回は、土地に設定された既存根抵当権の債務者(A法人)が設定後2度に渡り、吸収分割会社として、それぞれ、B法人、C法人に会社分割をしていました。

 

 

 

 

ところで、根抵当権は通常の抵当権とは異なり、根抵当権特有の規定がいくつか存在しますが、債務者の会社分割もその一つです。

 
 
 
根抵当権者又は債務者の会社分割)
第三百九十八条の十  元本の確定前にその債務者を分割をする会社とする分割があったときは、根抵当権は、分割の時に存する債務のほか、分割をした会社及び分割により設立された会社又は当該分割をした会社がその事業に関して有する権利義務の全部又は一部を当該会社から承継した会社が分割後に負担する債務を担保する。
 
 
 
 
…という訳で、根抵当権は当然に債務者複数の共用根抵当権になる為、追加設定の前提として、既存根抵当権の債務者をA法人、B法人、C法人とする変更登記を入れなくてはなりません。(下記のような登記を入れます。)なお、現在は登記原因証明情報として、会社法人等番号(分割事項の確認が取れるもの)を提供すれば会社分割の記載のある履歴事項証明書等を省略できます。
 
 
 
①目的:根抵当権変更
 原因:年月日会社分割
    変更後の事項
     債務者 A法人
         B法人
 
 
②目的:根抵当権変更
 原因:年月日会社分割
    変更後の事項
     債務者 A法人
         B法人
         C法人
 
 
 
 
 
さて、この後の処理ですが、金融機関としては当初予定していた債務者はA法人のみだったので、保存登記・追加設定の登記をする前に、もとのA法人のみに戻して欲しいとの事。もちろん、これは契約なので問題なくできます。
 
 
 
 
 
ここで、複数いた債務者が減ることになるので、受験知識でよく使った「形式的に明らかに根抵当権者に不利な変更登記は権利者と義務者が入れ替わる」という知識を用いました。当然、金融機関の登記識別情報も必要になります。(下記のような登記になります。)
 
 
 
③目的:根抵当権変更
 原因:年月日変更
    変更後の事項
     債務者 A法人
 
 
 
 
なお、A法人、B法人、C法人は代表取締役に同一人がいましたが、登記的には利益相反には該当しないようです。
 
 
 
 
 
あとは、普段どおり、建物の保存登記と共同根抵当権の追加設定登記を行うのみです。
 
 
 
 
 
…とまぁ、こんな感じで、基礎的と言えば基礎的な登記でしたが、普段あまりないケースでしたので、書籍片手に取り組みました。最初、話を戴いたときはもう少し複雑な登記になるかと思いましたが、最終的にシンプルな形に落ち着きました。